LD「ミステリー・ゾーン傑作選」 解説書
2017/10/31
2017/10/30
2017/10/29
再録40 MZ00 メイキング オブ ミステリー・ゾーン
2005年に発売された『冒険野郎マクガイバー』DVD発売の際にパラマウント・ビデオ・ホームページのために執筆された「海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 につづいて、次の再録は「ミステリー・ゾーン」LDの解説「メイキング オブ ミステリー・ゾーン」です。
未知の世界ミステリー・ゾーン1 Who is ロッド・サーリング
未知の世界ミステリー・ゾーン2 サーリングを支えた男たち1
未知の世界ミステリー・ゾーン3 サーリングを支えた男たち2
未知の世界ミステリー・ゾーン4 ミステリー・ゾーンが生まれた時代1
未知の世界ミステリー・ゾーン5 ミステリー・ゾーンが生まれた時代2
まだまだ大量に後が控えていますので、1ページずつをスキャンして9回でお送りします。画像をクリックしていただくと、画質の良い画像が表示されます。表示する機器によっては移動が難しい場合もあるようですが、ご容赦下さい。
2017/10/28
再録39 M14『冒険野郎マクガイバー』最後に一言
最後に一言
『マクガイバー』は、とにかく1本としてはずれのエピソードがありません。外国テレビドラマがどれほどおもしろいものかと聞かれれば、「『マクガイバー』を観ればわかります」と言いたいくらいです。これぐらいおもしろいのは、『マクガイバー』ぐらいじゃないですかね。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/27
再録38 M13『マクガイバー』製作の背景 (5)
■すばらしく出来のいい日本語版
日本語版も、ものすごくいいできです。小山悟さんがキャスティングを決めた初代ディレクターで、二代目が蕨南勝之さんという、男性アクションものをやらせてはピカイチの人が演出をやっています。翻訳・平田勝茂というのは、『ナイトライダー』のチームです。本当にセリフがパキパキしていて、男たちの夢の王国みたいなところがあるんです。
また石丸博也、宮川洋一、内海賢二、岡本麻弥らの日本語版のキャストの完璧度は、恐ろしいぐらいですね。原語版と比べるとわかりますが、日本語版のほうが勝ってる! まずマクガイバーの石丸博也さんというキャスティングが完璧、これは石丸さん以外ありえないキャラクターというんですか、その優しさと男気みたいな部分がピッタリとはまっている。
また、宮川洋一さんというキャスティングをよくぞ思いついたと思います。確かに宮川洋一さんは外国TVも山ほどやっていらっしゃるし、僕らにとっては『ウルトラセブン』のマナベ参謀なんだけど、ものすごくいい声の人なんですね。他の人との声のアンサンブルがとてもいい。内海賢二さんも、よくこのダルトンというキャラクターを内海賢二さんにしたな、と思います。ユーモラスなセリフ廻しは絶品です。
ペニーは、岡本麻弥さんが楽しげに演じています。ペニーの可愛らしさは岡本さんの出した味でもあるんです。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/26
再録37 M12『マクガイバー』製作の背景 (4)
■カナダ撮影の突破口となった『冒険野郎マクガイバー』
もう一つ『マクガイバー』がアメリカのアクション・テレビドラマ史上にとって重要なのは、撮影の拠点をカナダのバンクーバーにおいて撮影したという点です。カナダには砂漠地帯や山岳地帯、森林地帯があり、バンクーバーを拠点に撮れば、海岸線も含めて世界中の情景が撮れるということに『マクガイバー』スタッフは注目したんですよ。
カナダを使って世界中の情景を取ることを初めて意図的に、そして本格的にやった、いわば突破口となった作品なんです。しかも、撮影ではかなりムチャなことをやっているんですが、ものすごく低コストであげることができたんです。
そして、『マクガイバー』でこれだけのものが撮れるということに気が付いたアメリカのテレビ会社は、これ以降、『ツインピークス』や『X-ファイル』とか『スター・トレック でディープ・スペース・ナイン』とかが、次々にバンクーバーを撮影拠点として、カナダのスタッフを雇って撮影するようになったんです。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/25
再録36 M11『マクガイバー』製作の背景 (3)
■ベテラン監督がずらり
監督にもアメリカの手練れの人揃えていて、例えば『プリズナーNo. 6』『エアウルフ』『チャーリーズ・エンジェル』を撮っていたドン・チャフィー、『スパイ大作戦』『ラットパトロール』などを撮っていたリー・H・カッツィン。彼は1話のパイロット版の監督もしています。他にも『特攻野郎Aチーム』『ナイトライダー』をやっているブルース・ケスラーとか、『ベイウォッチ』『エアウルフ』をやっているブルース・セス・グリーン、『新スター・トレック』をやっているロブ・ボーマン、『白バイ野郎ジョン&パンチ』『ベガス』『V』のクリフ・ボールとか。
さらに、アレクサンダー・シンガーという『コンバット』とか『ミステリーゾーン』なんかをやっている監督とか『サンセット77』から『鬼警部アイアンサイド』『刑事コジャック』『ヒルストリート・ブルース』『白バイ野郎ジョン&パンチ』まで撮ってきた大ベテランのドン・ウェイスも監督しています。60年代、70年代のアクションの名手がズラリと名を列ねているんですね。
とにかくスタッフを見ると、僕らにはおなじみの人ばっかりなんですよ。こうしたベテランの人たちが、マクガイバーというキャラクターの持っている良さを全部知り尽くした上で、すごい余裕で作ってるんですね。だからキャラクターよし、ストーリーよし、演出よし、スタッフよしで、1本1本がとてもよくできている。こんなに飽きないテレビシリーズってないですよ。
さらに、アレクサンダー・シンガーという『コンバット』とか『ミステリーゾーン』なんかをやっている監督とか『サンセット77』から『鬼警部アイアンサイド』『刑事コジャック』『ヒルストリート・ブルース』『白バイ野郎ジョン&パンチ』まで撮ってきた大ベテランのドン・ウェイスも監督しています。60年代、70年代のアクションの名手がズラリと名を列ねているんですね。
とにかくスタッフを見ると、僕らにはおなじみの人ばっかりなんですよ。こうしたベテランの人たちが、マクガイバーというキャラクターの持っている良さを全部知り尽くした上で、すごい余裕で作ってるんですね。だからキャラクターよし、ストーリーよし、演出よし、スタッフよしで、1本1本がとてもよくできている。こんなに飽きないテレビシリーズってないですよ。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/24
再録35 M10『マクガイバー』製作の背景 (2)
■『ハッピー・ディズ』の国民的キャラクター、あの‘フォンジー’が総合プロデュース
第1シーズンの中心ライターがスティーブン・カンデル。この人は『ロックフォードの事件メモ』とか『特攻野郎Aチーム』とかをやっていて、アクションの男性キャラクターを書かせればともかく超一級。この人がシリーズ構成をしているんです。
さらに、製作者がジョン・リッチというベテランの人と、ヘンリー・ウィンクラー。ウィンクラーは、アメリカでは『ハッピー・ディズ』のフォンジーというキャラクターを演じて国民的遺恨と呼ばれている人です。映画『アメリカン・グラフティ』とTVシリーズ『ハッピー・ディズ』は、アメリカの50年代を描いた青春ドラマの双璧なんですよ。何しろ、スミソニアン博物館に彼の来た革ジャンが「フォンジーの着た革ジャン」として展示されているといますから。
フォンジーは、学校にはでてくるんだけど、いつもバイクのことと音楽のことしか考えてなくて、自分でバイクの修理屋みたいなことをアルバイトでやっていて、それでちゃっかり稼いでいるという、その頃の不良高校生の設定なんですね。そしてプレスリーに最初に気がつく世代の男の子で、ある種『アメリカン・グラフティ』よりも『ハッピー・ディズ』の彼のほうが、50年代のアメリカがまだ幸せだった時代の象徴なんです。
そのヘンリー・ヴィンクラーが役者を辞めたあと『マクガイバー』の総合プロデューサーになっている。それが多分、レギュラー陣のキャスティングが異常なぐらいアンサンブルがとれている理由だと思います。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/23
再録34 M09『マクガイバー』製作の背景 (1)
■プロデューサーのテリー・ネーションがもたらしたイギリス風味
第1シーズンでは、「オープニング・ガンビット」といういわゆるアバン・タイトル、冒頭で本編とは関係ないマクガイバーの冒険をとりあえず1本描くんですが、それ専門のスタッフを用意しているんです。本編のエピソードとは違うイントロの5分間ぐらいで、マクガイバーが地図を盗んできたり、ヤバい書類か何かを取り戻してきたりという、そこだけに別のスタッフを組んでやっています。
第1シーズンのプロデューサーは、テリー・ネイションというイギリスの『Doctor Who』とか『Blake's 7』という作品の脚本を作った人で、イギリスのSFテレビドラマでは超1級のライターなんですよ。『バロン事件帳』とか『セイント』などの脚本も書いていますが、その人がプロデューサーになっていて、またこの人はオープニング・パートを描くのが好きで、やたらオープニング・パートだけ書くんですね。テリー・ネイションは本来イギリスの人で、あんまりアメリカの仕事はやらないんですが、よほど企画が面白いと思ったのか、のって書いています。
テリー・ネイションが第1シーズンにハイッテいることの重要性と言うのは、番組にイギリス風のユーモアをもたらしたことだと思うんです。実はテリー・ネイションは、伝説的なラジオ番組の『The Goon Show』のスタッフ・ライターだったんです。『The Goon Show』は、ピーター・セラーズとテリー・サザーンが出演したイギリス不条理コメディの源流。モンティ・パイソンの連中がみんな気が狂ったように追いかけられていた.最も知的なギャグ集団のライターの1人だったんですね。
だから『マクガイバー』というのは、イギリスのコメディとSFの要素がテリー・ネイションが入ることによって導入されたようで、明らかにアメリカ風じゃないんです。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/22
再録33 M08テレビドラマ史の中の位置づけ (2)
■『冒険野郎マクガイバー』が守り抜いた外国ドラマ女性ファン
日本で放送された外国テレビドラマの歴史の中での位置づけで言うと、もし『マクガイバー』がなければ、今日の外国テレビドラマ・ファンというのは、いなくなっていたと思います。80年代に外国テレビドラマが地上波でまったく放送されなくなっていた時期があるんですが、その中で唯一残っていたのが『マクガイバー』だったんです。
70年代は、ベテランのオジさん刑事が主人公のドラマが主流で、若い女性ファンが観る作品がなくなってしまった。その中で『刑事スタスキー&ハッチ』と『白バイ野郎ジョン&パンチ』が女性ファンを取り戻して、い途切れかかったのを『マクガイバー』が1本で守り抜いたんです。まだBSやCSのチャンネルがあまりなかった頃ですから。
『マクガイバー』は明らかに男性ファンよりも女性ファンのほうが多い。それはやはり、マクガイバーが女の子に優しくてずるいことをしない。さっぱりしていて性格が明るい。とにかく笑顔が素敵で、落ち込まない。女性ファンはマクガイバーの優しさと、お喋りするよりは行動みたいな、ストイックなヒーロー像に惹かれるんです。マクガイバーの不思議なところは、女の子とはイチャイチャしない。優しいだけというのが特徴的です。アメリカのこの手の作品では、めったにいないキャラクターです。それはヘンリー・ウィンクラーたちの狙いなんだと思います。意図的に、そう創っている。
ところが、マクガイバーには、女の友達が山のようにいる。昔、腐れ縁で事件を解決して、女の子のほうはマクガイバーが好きなんだけど、マクガイバーにはその気がないから友達にしかなれないみたいなのが、至る所にいる。今時いない、まさにフィクションだけで存在する男ですね。だから深夜の放送にもかかわらず『マクガイバー』は女性ファンに愛されたのだと思います。ですからこのDVDは、ぜひ女性の方に買って欲しいと思います。マクガイバーは、本当にステキな人間像ですからね。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/21
再録32 M07『マクガイバー』テレビドラマ史の中の位置づけ (1)
■70年代と90年代をつないだシリーズ
ドラマ史的にいえば、マクガイバーは、70年代にグレン・A・ラーソンとかスティーブン・キャレルたちが作った『100万ドルの男』や『グレート・アメリカン・ヒーロー』、『特攻A野郎チーム』のようなホラ話型の、ビール片手に観て「ああ、面白かった」というような、読み切りのいちばんいいキャラクターものの流れを受け、80年代的に進化させたものです。
だから『マクガイバー』は70年代の良さを受け継ぎ、さらに90年代の先駆をなした1本なんですね。『マクガイバー』が切り拓いた先に『新スター・トレック』とか『X-ファイル』以降の90年代の新しいドラマ群があるんですよ。
逆に言えば、70年代ドラマと90年代ドラマ中間を『マクガイバー』が1本で支えきっていったといえるかもしれません。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/20
再録31 M06‘マクガイバー’登場の時代背景 (2)
■ベトナム戦症候群で見失われたヒーロー像を新たに創造
この頃のアメリカはベトナム戦症候群が大きな問題になっていて、ヒーロー像を見失っていた時期なんです。『マクガイバー』は、ベトナム戦症候群が問題になっている状況だからこそ、武器を使わないナイスガイを力技で作ったんですね。
それは企画したリー・ディビット・ゾロトフに、おそらく、いちばん最初の企画段階で、こうゆうキャラクターを作ろうと言うのがあったんでしょうね。そこにスティーブン・カンデル「やテリー・ネイションたちが「そいつはおもしろい。やってみよう」と、乗ってきたんだと思います。このリー・ディビット・ゾロトフという人はアイデアメーカー ですが、ものすごくユニークな設定のキャラクターをツクルことで定評があります。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/19
再録30 M05‘マクガイバー’登場の時代背景 (1)
■時代の先を読んだメッセージ
この番組の先見の明があるところは、いわゆる宗教がらみの過激派が世界の新たな火種になるとか、マフィアのようなビジネスとして犯罪をやる連中が倒しても倒しても倒しきれないほどでてくる、と言うことが鮮明に描かれている点です。冷戦が終わった後に、ベルリンの壁が崩れたときもそうなんですが、みんな「新しい時代が来る」と、その瞬間だけ思っていた。「これからはいいことが続くんじゃないか」と夢見たんですが、『マクガイバー」は「そうはいきませんよ」と。善意で、なんとか紛争を調停しようとする政治家が暗殺されようとなるエピソードがいっぱいあるんですよ。これは、イギリスの要素ですね。
マクガイバーは明らかに時代に先んじていました。「世界はずうっとこのままですよ。国は変われど、ひとが変われど、犯罪もなくならないし、独裁国家みたいなところもあれば、貧しい人たちをいじめ抜く政治家も決してなくならない。でも、それをはね返せるのは人間だけなんだ」というマクガイバーたちの主張は非常に力強い。だから、マクガイバーって、もっと誉めてあげればいいのにって、昔から思っていました。
フェニックス財団というのも、考えてみるとかなりキナ臭い。財団といっておきながら、そうとう政府の息がかかっていて、軍が全面に出るとまずい、CIAが出るともっとまずいという場面に、民間の財団を隠れ蓑にして解決するという、非常に今日的な設定です。
どちらかと言うと、イギリスのドラマづくりに近いですよ。イギリス人は、いかにもありそうな話を作るのがうまいですね。『電撃スパイ作戦』のネメシスのように、元国連や各国の情報部にいた連中がリタイアして作った、国連でもCIAでもMI6でもカバーできない部分を補う民間スパイ組織みたいな.そんなのあるわけないんだけど、ホントは。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/18
再録29 M04 ‘マクガイバー’の魅力とは (4)
■バラエティに富んだ脚本
男の子と女の子が惚れたはれた以外でもおもしろいストーリーが作れるんだ、ということを実証している作品です。
物語のパターンも驚くほど豊富で、昔の友達の油田探しを手伝ったりとか、昔ジョン・ウェインがやったような油田火災を消すヘルファイターのような話とか、黒じゅうたんのように大挙してやってくるアリから森林を守るかとか、共産圏に行く『スパイ大作戦』みたいな話とか、SFみたいに科学研究所を舞台にした細菌戦争みたいな話もある。アクションだと思ったら、次は秘境探検、その次はコメディ、ファンタジーといったようにとにかく1本として似たパターンがありません。
しかもラストに偶然で勝っちゃうとか、いいかげんなアクション崩しで勝っちゃうといったいいかげんな脚本がない。必ずマクガイバーの科学知識とピンチ一発逆転の仕掛けがみごとにはまって勝つという、プロがちゃんと作ったしっかりした物語になっています。情景的には『スパイ大作戦』がやってきたことなんですが、それを80年代のストーリーに組み替えてやっているところが非常によくできています。マクガイバーというオリジナルのキャラクターには、ピンチを切り抜けるアイデアが設定そのものの中にビルト・インされているんです。体力もあるし、ロープウェイを腕一本でぶら下がって行くといった、スポーツ・キャラクターでなければありえないようなシークエンスができるんです。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/17
再録28 M03 ‘マクガイバー’の魅力とは (3)
■練りに練られたサブ・キャラクターたち
ピーター・ソーントンのキャラクターをやっているダナ・エルカーもいい。この人は『スティング』の中でいちばんオイシい刑事のキャラクターをやっている、演技派の人です。「マクガイバー」の中では監督をやってます。
ジャック・ダルトンのキャラクターは、腐れ縁で儲け仕事があるぞってやってくると、必ず後ろにコワいお兄さんを連れてくる、マクガイバーにとっては迷惑至極なんだけど、ようするに断り切れない腐れ縁の友達なんですね。ダルトンは『ロックフォード』のエンジェルみたいな存在です。ムショ仲間のエンジェルから「ジム、ちょっと会ってくれねえかな」という電話がかかってくると、ロックフォードはイヤな予感がする。ただ、刑務所の中でよくしてもらったから、断れないんですね。気のいい奴でもあるし。でも、とんでもない事件を持ち込んでくるので、ロックフォードはえらい目に遭うんです。毎シーズン、エンジェルの出てくる話は名物ストーリーになっているんですが、ダルトンはそれの『インディ・ジョーンズ』版といってもいいかもしれません。宝探しをなりわいにしているので、共産圏のどこかにおいしい話がある、みたいな話を聞きつけて、よせばいいのに、ほとんどの連中が近寄らないのに、飛行機の操縦ができるからやばい仕事にどんどん入り込んでいく。でも自分で解決できないからと「マクガイバーを呼ぼう」と。マクガイバーも「困ったヤツだ」と思いながらも、ダルトンとはウマが合う。昔何回か、二人でけっこういい仕事をこなしてきたみたいなところがあったように描かれていて、本当にキャラクターが練れています。
ペニーもいいキャラクターですね。見てくれは普通の女の子なんだけど、実はかなりアタマが切れて、未完成の峰不二子みたいなキャラクターなんです。勘が強くてアタマも切れて、プランニングはできるんだけど、悲しいかな実行力がない。あれが成長して一人前になれば峰不二子になるんですが。そこで、実行力の部分はマクガイバーに押し付ける。これまた、「マック、ちょっと聞いてほしいんだけど…」と言ってはやってくるけれど、必ず危ない事件にからんでいる。マクガイバーとしてはやめてほしんだけど、結局事件に巻き込まれて大騒ぎになる。
マクガイバーにとっては1円にもならないんだけど、ダルトンとペニーのことを必ず助けてあげる。こういうストーリーは他にないんですよ。非常に珍しい。アメリカでもこんなストーリー・パターンの作品はないんですよ。
それから、歌手もやっている(→シルヴァーヘッド)マイケル・デ・バレスという人が演じているマードック。このキャラクターは、どちらかと言うと『87分署』のデフマンに近い、マクガイバーを目の敵にするフェニックス財団の鬼門みたいなキャラクター。天才科学者で変装の名人で、血も涙もない男で、マクガイバーをへこませることが人生の楽しみ。しかも毎回死ぬシークエンスなんだけど必ず生き返ってくるという、すごくオイシい役で、『マクガイバー』のシリーズ後半の目玉のキャラクターになってきます。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/16
再録27 M02 ‘マクガイバー’の魅力とは (2)
■空前絶後のキャラクター、マクガイバー
アメリカのアクション・ドラマの特徴的なところは、やっぱり何かのきっかけで‘アメリカン・ジャスティス’が表出してしまうところ。主人公に、アメリカ人の考えている正義を載せたくなるんです。単に、困っている人を助けたい。それは、ピーター・ソーントンが困っているから助けたいと言う手近なところから、もっと大きなところで言えば、虐げられている人を救い出したいという思いがある。国とか組織ととか関係ない。あらゆる人が自由に生きられればいいんだ、と。
だから、第4シーズンや第5シーズンになってくると、子供たちを麻薬から救うエピソードとか、子供たちを無料のチャリティーのスポーツクラブに通わせて不良グループから脱出させるエピソードというのが増えてきて、フェニックス財団がだんだん遠のいていってしまう。あるいは、戦争が終結後の大混乱している国で、そこで盗みをして暮らしている孤児の子供たちをマクガイバーが地元のマフィアから切らせてやるエピソードとか、子供たちを悪の組織から守らなければいけないと言うのが、後半の『マクガイバー』のほとんどのテーマになってくる。
マクガイバーのいいところは、何かノンシャランな、ほんとうの自由人みたいな、70年代のフラワー・チルドレンの理想みたいなキャラクターであるところです。何にも縛られずに、自分の好き勝手をやってでも性格が荒れずに、結婚をしていないけれど女友達は何人もいる。本当のバランスのいい、大人の、若さを失っていないキャラクターなんですね。
見ていると気づくんですが、マクガイバーはフェニックス財団に雇われているわけじゃあないんですよ。単にピーターとの友情で引き受けているだけなんですね。フェニックス財団から依頼を受けて、いろんな事件をカイケツするスペシャル・エージェント。もちろんフェニックス財団所属の名刺みたいなものを持ってはいるんでしょうけど、基本的には命令では動かないんですよ。ピーターが「マックにしかできん。頼む」というと、「しょうがないなあ」とか「他に人はいないの?」とか言って、しかも銃は使わない、ナイフも使わない、ともかく科学知識とひらめきと勇気と抜群の行動力であらゆるものを切り抜けていくという、ある種SFの盲点をついている物語です。そういう点でも『冒険野郎マクガイバー』というのは空前絶後で、前後に似たものがないんですよ。この作品だけ。だからリチャード・ディーン・アンダーソンが抜けると成立しないところがある。
リチャード・ディーン・アンダーソンは、『冒険野郎マクガイバー』の後、MGMで『スターゲイト SG-1』という作品で、今度はプロデューサーも兼ねてSFをやるわけです。「マクガイバー」をやっていたパラマウントTVのプロデューサーがMGMテレビへ移って、製作を担当します。ただ、『スターゲイト SG-1』でのリチャード・ディーン・アンダーソンの出番は第8シーズンまで、その後は『スターゲイト アトランティス』のエグゼクティブ・プロデューサーにシフトする予定です。もともと役者としてはユニークな人で、本人にはあまり役者という意識がない。マクガイバーみたいな人なんですよ。あまりお金もうけをしたいという意識がないみたい。ただ体を鍛えていることが好きみたいで、アメリカの俳優のなかでは、個性派ですよね。最近、彼は子供が出来て、子供と親の問題をものすごく考えているようです。インタビューを読むとともかく子供が大切で、子供たちが楽しめるものを創りたいとか、自分の子供がどうなっていくのかを親はもっと心配しなくてはダメだとか、本当に親としての発現が増えています。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/15
再録26 M01『冒険野郎マクガイバー』 ‘マクガイバー’の魅力とは (1)
■世代を超えるヒーロー像
マクガイバーを演じたリチャード・ディーン・アンダーソンは、もともと非暴力主義の人で、今の言葉でいう「スポーツおたく」なんですね。アイスホッケーはセミプロ級の腕前。スキューバ・ダイビングでもスカイ・ダイビングでも、とにかくスポーツが好き。これは、マクガイバーというキャラクターにかなりかぶる部分なんですよ。今でもリチャード・ディーン・アンダーソンは兄貴分のようなイメージで多くの人に愛されています。全国の学校の先生やスポーツ・インストラクター、スポーツのコーチたちは「『マクガイバー』の話をすると若い子たちと話ができる」と。つまりアメリカでは、『マクガイバー』は世代を超えるヒーロー像として別格の存在なんです。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
2017/10/14
2017/10/13
2017/10/12
2017/10/11
2017/10/10
2017/10/09
2017/10/08
2017/10/07
2017/10/06
2017/10/05
2017/10/03
再録11 MT00「漫画の手帖」
次の再録は同人誌「漫画の手帖」の記事3編です。
- マッグーハンが作り出した「プリズナー No. 6 」スパイから旅立ち、SFを通過して、ドラマとなった!! (1987 Winter No. 24)
- あるときはミステリー、またあるときはSF,スプーフ、アドベンチャー、スリラー……しかしてその実態は、「The Avengers」(1987 Summer No. 25)
- 「The Wild, Wild WEST 大西部のマッド・サイエンティスト・ワールド!」(1988)
美しい手書き文字をスキャンしてお送りします。
雑誌から該当部分のみを抽出しているため、読みにくい部分があるのはご容赦下さい。
2017/10/02
再録10 LR10 その10:ローン・レンジャーの仲間たち
「ローン・レンジャー」を見ていて、少しずつローン・レンジャーを助ける仲間が登場してくるのがおもしろかった。
銀鉱を管理している老鉱夫ジム・ブレイン、財政面でバックアップする銀行家ジョージ・ウィルソン、医者のホラチオ・タッカー教授、いつも冗談ばかり言っているメキシコ人のガンマン、ドン・ペドロ・オサリバン。
コメディー編があったり、ローン・レンジャーやトントとのやりとりも準レギュラーならではのふくらみがあった。TVシリーズならではのおもしろさで、それが凶悪なガンマンや殺し屋の非情さをさらに光らせたのだ。キャラクターひとりひとりの個性が楽しいのだ。
銀鉱を管理している老鉱夫ジム・ブレイン、財政面でバックアップする銀行家ジョージ・ウィルソン、医者のホラチオ・タッカー教授、いつも冗談ばかり言っているメキシコ人のガンマン、ドン・ペドロ・オサリバン。
コメディー編があったり、ローン・レンジャーやトントとのやりとりも準レギュラーならではのふくらみがあった。TVシリーズならではのおもしろさで、それが凶悪なガンマンや殺し屋の非情さをさらに光らせたのだ。キャラクターひとりひとりの個性が楽しいのだ。
「ローン・レンジャー」10の秘密 ビデオのインナー解説・再録
2017/10/01
再録09 LR10 その9:一代の名演が光る
ローン・レンジャーを演じるクレイトン・ムーア(1908〜99)は、シカゴ生まれでサーカス団長から男性モデルを経て、1938年スタントマンとして映画界に入った。生涯70本以上の西部劇映画に出演、その代表作が「ローン・レンジャー」だ。
シルバーを全速で走らせながら銃を連射する名シーンを見ても判るが馬の名手で、スタントマン出身ならではの挌闘シーンも得意だった。マスクの下のさわやかな笑顔が忘れられない。
後年、ローン・レンジャーの黒マスクと衣装を気軽につけて若いファン達を喜ばせた。1980年、「ローン・レンジャーの伝説」という企画が起こり、裁判でローン・レンジャーの衣装を着るのを禁じられるが、5年後訴訟によって、彼がローン・レンジャーの扮装をする許可が認められた。ムーアはまたマスクと衣装を着て、懐かしいファンたちを喜ばせたという。
トント役のジャイ・シルバーヒールス(1912〜80)はモホーク族のインディアンの血を引く俳優で、1940年の名作「シー・ホーク」でインディアンの斥候役で映画デビュー、60本以上の西部劇、コメディに出演した。馬のスタントマンもこなし、後には有名な馬のブリーダー・レーサーとしても成功した。トントが馬を乗りこなすシーンを見てもその馬術のうまさが判るだろう。
「ローン・レンジャー」の馬が駆け、悪人と挌闘するシーンでは、1940年代リパブリック映画や各社で活躍した映画のスタント・チームが参加、30分の中で本格的アクションを見せてくれる。ムーア、シルバーヒールス共に生涯ローン・レンジャーとトントで語られる国民的ヒーローだった。また自分が演じた役柄を愛した二人でもあった。
シルバーを全速で走らせながら銃を連射する名シーンを見ても判るが馬の名手で、スタントマン出身ならではの挌闘シーンも得意だった。マスクの下のさわやかな笑顔が忘れられない。
後年、ローン・レンジャーの黒マスクと衣装を気軽につけて若いファン達を喜ばせた。1980年、「ローン・レンジャーの伝説」という企画が起こり、裁判でローン・レンジャーの衣装を着るのを禁じられるが、5年後訴訟によって、彼がローン・レンジャーの扮装をする許可が認められた。ムーアはまたマスクと衣装を着て、懐かしいファンたちを喜ばせたという。
トント役のジャイ・シルバーヒールス(1912〜80)はモホーク族のインディアンの血を引く俳優で、1940年の名作「シー・ホーク」でインディアンの斥候役で映画デビュー、60本以上の西部劇、コメディに出演した。馬のスタントマンもこなし、後には有名な馬のブリーダー・レーサーとしても成功した。トントが馬を乗りこなすシーンを見てもその馬術のうまさが判るだろう。
「ローン・レンジャー」の馬が駆け、悪人と挌闘するシーンでは、1940年代リパブリック映画や各社で活躍した映画のスタント・チームが参加、30分の中で本格的アクションを見せてくれる。ムーア、シルバーヒールス共に生涯ローン・レンジャーとトントで語られる国民的ヒーローだった。また自分が演じた役柄を愛した二人でもあった。
「ローン・レンジャー」10の秘密 ビデオのインナー解説・再録
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